采女神社

【うねめじんじゃ】

奈良観光のポイントの1つと言うべき猿沢の池のほとりにひっそりと建つ神社である。町中にあって見過ごしそうな小社であるが、その社の姿に違和感がある。鳥居のある正面から見ると、社殿が完全に後ろ向きになってしまっている。猿沢の池に背を向けて社殿が建てられているのである。実はこの奇妙な配置には、ある伝承が残されている。

『大和物語』によると、奈良に都があった頃、ある帝が一人の采女を寵愛した。しかし時が経ち、やがて采女は顧みられなくなった。帝の愛を失った采女はそれを悲観して、猿沢の池のほとりの柳に衣を掛けて、そのまま入水してしまったのである。この霊を慰めるために建てられたのがこの社であるが、ところが采女の霊は、自分が身を投げた池を見るのは忍びないとして、一夜のうちに社殿を反対に向けてしまったという。

この采女の伝説は今でも語り継がれており、毎年中秋の名月の日には例祭が執りおこなわれる。

<用語解説>
◆采女
天皇や皇后に近侍して食事などの世話をおこなう女官。飛鳥時代には既に、地方の豪族の子女を遣わして采女としていた。他の伝承によると、この猿沢の池に身を投げた采女は安積(現・福島県郡山市)出身の者とされ、郡山市では「うねめ祭り」が毎夏おこなわれている。

◆『大和物語』
10世紀頃成立した歌物語集で、『伊勢物語』と並び称される。173の話よりなる。

アクセス:奈良県奈良市橋本町

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