石像寺 釘抜き地蔵
【せきぞうじ くぎぬきじぞう】
家隆山光明遍照院石像寺。と言ってもピンと来る人はまずいないが、【釘抜地蔵さん】と言えば、そのユニークな絵馬でなかなかの知名度のある寺院である。
千本今出川を少し北へ上がったところに、小さな山門と言うべき門がある。しっかりと見ておかないと通り過ぎてしまうほど、何の変哲もない門である。しかし、一歩その中へ入ると、手狭とも思える境内はまさに異空間である。いつ行っても線香の煙が立ちこめ、必ず参拝者がいる。そして圧巻なのが、本堂の壁面などに所狭しと飾り立てられたお礼参りの奉納絵馬である。奉納絵馬は全て同じデザイン。実物の釘抜きと八寸釘がセットになって板に打ち付けられている。
弘治2年(1556年)頃、近隣に紀伊国屋道林という商人がいた。ある時急に両手が痛み出し、何をやっても効き目がない。わらをもすがる思いでこのお地蔵さんに願を掛けた。そして満願の日、夢枕にこのお地蔵さんが現れた。“おまえの両手の痛みは、前世において人を恨み、人形を作ってその両手に八寸釘を打ち込んだことの報いである。しかし神力を持ってそれを取り除いた”とお地蔵さんは語り、抜き取った釘を見せた。そこで夢から覚めた道林が慌てて地蔵堂へ赴くと、お地蔵さんの前に血に染まった2本の釘が置かれてあったという。
これが【釘抜地蔵】の由来である。このお地蔵さんのご利益は単に前世の因縁を取り除くだけではなく、ありとあらゆる苦痛を取り除くという絶大なものである。ただしこの解釈は“釘抜き=苦を抜く”という語呂合わせから来るものである。だが、こういうところが庶民の信仰の純粋な部分だと言えるだろう。
アクセス:京都市上京区千本通上立売上ル花車町