おっぱしょ地蔵

【おっぱしょじぞう】

徳島市内には“おっぱしょ石”という有名な怪石があるが、阿南市にも「おっぱしょ=背負ってくれ」の名を冠した石の地蔵がある。

昔、ある男が酒を飲んで柳島町辺りをブラブラと帰っていた。するとどこからともなく「おっぱしょ、おっぱしょ」という声が聞こえてくる。周囲を見回しても、いるのは自分ただ一人。普通であれば怖れて逃げてしまうのだが、酒に酔った勢いもあって男は「負ってやろう、負ってやろう」と返事した。と、突然上の方からズシンと背中に何かが負ぶさってきた。いきなりで男は驚くが、自分が返事した手前、何が背中に乗っかってきたのかを確かめることもせず、そのまま歩き出した。ところがこの背中のものがやたらと重い。しばらく我慢して歩いていたが、とうとう辛抱たまらず、橋の上まで来ると川へとそれを投げ落とし、這々の体で家まで逃げ帰ったのである。

翌朝になって、気になった男が橋まで来ると、人だかりが出来ている。恐る恐る見に行くと、川には地蔵が沈んでいる。これが昨夜自分の背中に乗っかっていたものだと確信した男は、後になって地蔵を担いで、最初に声がしたところに地蔵を祀った。地蔵が「おっぱしょ」と口を利いたという噂は瞬く間に広がり、不思議な地蔵と有名になったという。また「いぼ取り地蔵」としてご利益があるとして、近在の人からの信仰も篤いと言われる。

現在でもこのおっぱしょ地蔵は民家の近くに安置されており、町ぐるみで大切に管理されている。平成20年(2008年)頃からは、地域の子供たちが中心となってお祭りが催されているとのこと。ちなみに子供たちが披露する伝説紹介では、この「おっぱしょ」の声掛けをしていたずらしたのは狸であるとされている。

アクセス:徳島県阿南市柳島町