日月神社 蜻蛉の寄生木
【じつげつじんじゃ とんぼのやどりぎ】
住宅街にあるごく普通の神社であるが、その境内には立ち枯れてしまったケヤキの御神木がある。かつてこのケヤキの木の途中からエノキの木が生えていて、なかなか有名なものであったらしい。そしてこの不思議な様子の木には、ある伝説が残されている。
この秋津村には、無理難題を言って家臣を困らせていた殿様があった。ある時、自分の年齢と同じ数の蜻蛉を捕ってくるよう家臣に命じた。ところが集められた蜻蛉の数が1つ足りない。怒った殿様は日月神社に行って、「もし本当に神の力があるのなら、このひとかたまりの蜻蛉を、御神木の木の股から別の種類の木にして生やしてみせろ。出来なかったら祠を取りつぶす。出来たならもう無理難題は言わない」と言い放って、御神木に蜻蛉を投げつけた。
すると途端に、ケヤキの御神木からエノキが生えてきた。蜻蛉がエノキの寄生木に変わったのである。それと同時に、殿様は無理難題どころか声を発することが出来なくなってしまったという。
<用語解説>
◆秋津
日月神社のある地域の名称であるが、古来、蜻蛉のことを秋津と呼んでおり、おそらく上記の伝説に唐突に登場する蜻蛉の存在と大きく関係していると考えられる。
アクセス:埼玉県所沢市北秋津