上西園のモイドン

【かみにしぞののもいどん】

モイドンは漢字で書くと「森殿」。即ち「森山(モイヤマ)の神様」という意味合いである。この名で呼ばれる場所は、南九州各地、特に鹿児島の薩摩地方に多く残されている。鹿児島県下で100箇所以上、指宿市内に限ると約40箇所ほど確認できるとのことである。

モイドンは集落ごとの民間信仰の名残であるという。小さな雑木林のようになった場所に、巨木が一本生えている。これが神を祀る依代(ヨリシロ)になる。巨木そのものがモイドンではなく、かといって何か祠を建てなければならないというわけでもない。巨木を中心とした小さな空間そのものがモイドンであり、ここで祭祀をおこなっていたと考えられるのである。

上西園のモイドンは、そのような民間信仰の場を明確に残しているものとして市の指定文化財とされている。ここにはアコウの巨木と共に山の神と稲荷神の祠が祀られており、「民俗神の聖地」として紹介されている。

ただし信仰の聖地であるということは、裏を返せば、その土地を汚すことは祟りにつながる。特に依代である巨木は触れてはならず、枝一本葉一枚すら持ち帰ることは許されない。場所によっては禁忌の地として、モイドンに立ち入ることもまかりならぬとされている。

アクセス:鹿児島県指宿市道上