合槌稲荷神社

【あいづちいなりじんじゃ】

三条神宮道(平安神宮へ至る道)を東へ少し行ったところに、合槌稲荷の参道の入り口がある。参道といっても本当にこぢんまりしたもので、下手をするとついうっかりと通り過ぎてしまうかもしれない。実際この参道は私道であり、この奥には数軒の家が軒を並べている。

『小鍛治』という謡曲がある。三条粟田口(この稲荷は三条通に面して、真向かいが粟田神社である)に住む、小鍛冶宗近という刀鍛冶が天皇の勅命を受けて守り刀を打とうとする。しかし、刀鍛冶を手伝う者がいない。

宗近は伏見稲荷に祈願し、ある若者と出会う。その若者が鍛冶の手伝いをしてくれ、見事な刀ができた。その若者の正体は狐であり、その刀は【小狐丸】という名で呼ばれるようになった。

合槌稲荷はこの鍛冶の手伝いをした狐を祀っており、火の用心の効験があるという。また謡曲をはじめ、歌舞伎や能でも上演される有名な演目であるため、そのゆかりの地ということで演者がお参りに来ることもあるらしい。

<用語解説>
◆小鍛冶宗近
平安時代の刀鍛冶。三条に住まいがあったため「三条宗近」とも。生没年は不明であるが、上記の伝承は一条天皇の御代(986-1011)とされている。祇園祭の長刀鉾の上に取り付けられている大長刀は、宗近が八坂神社に奉納したものである。天下五剣の“三日月宗近”が代表作(国宝)。

◆小狐丸
伝説の名刀。実在していたと言われているが、現在は所在不明。同名の刀はが現存するが、上記伝承のものとは異なる。

アクセス:京都市東山区中之町