道通神社

【どうつうじんじゃ】

主祭神は猿田彦命。近隣の八幡社も合祀しているので、応神天皇も祭神となっている。しかし“道通さん”の名で親しまれているこの神社の信仰の本質は「道通様=蛇」である。

社伝によると、永禄年間(1558~1580年)に笠岡道通谷に御神霊を祀ったが、戦乱の時代ゆえに人々の生活も苦しく、誰も神事を執りおこなう者もなく、祠は荒れるにまかせていたという。ところがそのせいか、このあたりに疫病が蔓延し、災害や凶作にも見舞われ、人々の間に「これは道通様の祟りである」との噂が流れた。そこで御神体を横島に移し、社殿を造って祭事を復活させた。すると凶事はすべて解消され、江戸時代に入ってからはますます信仰厚い神社となったのである。

道通様は蛇神であるが、その実体は“憑き物”。このあたり一帯では“トウビョウ”の名で呼ばれている。“トウビョウ”とは“土瓶”の意味であり、陶製の容器の中に入れて家にしまわれていることが多いらしい。またその姿は、体長20cm程度の小蛇であり、色は全体に黒みがかっていて、首の部分に金色の輪があるのが一般的なようである。そして他の種類の“憑き物”同様、“トウビョウ持ち”あるいは“トウビョウ筋”と呼ばれる家系に代々憑くとされ、その家を裕福にしたり、怨みに思う相手に取り憑いて災いを起こしたり病気にさせたりする。ただし粗末に扱うと、飼い主本人に祟ると言われている。

道通神社の社殿の裏手には“道通様”を祀った小型の祠がずらりと並んでいる。それぞれ信者が奉納したものであるが、「蛇の家」として水木しげるが紹介した祠である(現在はかなり整理されて、水木のイラストのような風景はない)。祠の中には、擬宝珠に巻き付き、それぞれ阿吽の形をした2匹の白蛇の像が祀られている。これが“道通様”の姿であり、一般的な“トウビョウ”とは異なる。おそらく“憑き物”から神化した姿となっているのだろうと推測される。

アクセス:岡山県笠岡市横島