池田湖

【いけだこ】

九州最大の湖であり、古来、開聞の御池と呼ばれていた通り、遠方に開聞岳を臨む位置にある。

現在の池田湖で最も有名なものはイッシーであろう。ネス湖のネッシーに模して名付けられたように、湖に生息しているかもしれない巨大生物である。その存在が噂となったのは早くても昭和前半頃、しかし全国的に名が知られるようになったのは昭和53年(1978年)9月、法事のために池田湖畔にある家に集まった約20名の人が一斉に目撃したことがニュースとなったためである。体長は約20mほど、背中にコブがあって全身の色は黒色、形は蛇か鰻に似ているという。さらにその年の暮れには、波間に現れたイッシーの姿が写真に収められ、その存在は現実味を増すことになった。その後、平成3年(1991年)にも、立て続けにイッシーの目撃があり、波間を泳ぐ巨大なコブの様子がビデオによって撮られたのである。池田湖ではイッシーを観光の目玉としており、観光協会も積極的にPRしている。

イッシーについては、池田湖に生息する大ウナギではないかという説もあるが、最大でも2mにしかならない大ウナギを20mの巨大生物と見間違うことはあまり考えられないことだろう。

さらに池田湖には昔から龍神伝説があり、奇怪な話が残されている。『三国名勝図会』によると、ある農夫が婚礼に呼ばれて湖の近くを歩いていると、草むらに人間の頭をして身体は龍のようなものが横たわっていたという。農夫が短刀を抜いて首あたりを切り付けると、その不思議なものは血を流して湖に逃げてしまった。その晩、農夫は病で突然亡くなり、その妻が狂ったように「我はこの湖の龍王である。我を殺した報いとして子孫をことごとく絶やしてやる」と言い出した。親族が社を建てて罪を償うと謝罪すると、龍王は怒りを静めて妻の狂気も収まった。そしてただちに龍を祀る祠が建てられた。それが現存する池王明神であるとされる。

<用語解説>
◆『三国名勝図会』
天保14年(1843年)、薩摩藩10代藩主・島津斉興の命によって編纂された地誌。薩摩・大隅・日向の3カ国の地誌や名所を詳細に記したものである。

アクセス:鹿児島県指宿市池田