美保神社

【みほじんじゃ】

祭神は、事代主神と三穂津姫命。事代主神は出雲の大国主命の御子神であり、三穂津姫命は大国主命の妻であるが、この二神は実の親子とはされていない。

この美保関の地は、記紀の「国譲り」神話の舞台の一つとされている。高天原からやって来た武甕槌命(建御雷神)が国譲りを迫った時、大国主命は、まず息子の事代主神の返事を聞くようにと答えた。ちょうどその頃、事代主神は美保に来て魚釣りをしていた。そこで熊野諸手船に使者を乗せて遣わし、その意向を尋ねると、事代主神は「承知した」と言った。そして船を踏み傾け、逆手を打って青柴垣に変えると、その中に隠れてしまったのである。

美保神社の重要な祭礼である、諸手船(もろたぶね)神事と青柴垣(あおふしがき)神事は、この国譲りの場面を再現したものであるとされる。12月3日におこなわれる諸手船神事は、2艘のくり舟に乗った氏子が競い合うように船を漕ぎ、事代主神に意見を尋ねに行く場面を再現している。また4月7日におこなわれる青柴垣神事は、氏子の代表である当屋が物忌潔斎・断食を経て、青柴垣をこしらえた船に乗って港を一回りするものである。

またこの国譲りの神話において、事代主神は釣りをしていたとされるため、豊漁の神とされる。そして「えびす様」として大いに信仰されている。七福神の絵に見られる、右手に釣竿、左手に鯛を抱えた姿は事代主神の故事にちなんだものである。

<用語解説>
◆国譲り神話
事代主神は国譲りを承諾したが、もう一人の御子神であった建御名方神は武甕槌命に対抗して力比べをして敗れ去り、諏訪まで逃げて降伏する。そしてこの二神の承諾によって、最終的に大国主命は国譲りをおこなう。事代主神は初めに国譲りを承諾した神として託宣の神であり、また皇室にとっての守護神とされている。

◆えびす神
本来は「海の向こうからやってくる、稀に現れる外来物」に対する信仰から生まれてきた神であると考えられる。それが国譲り神話の際の事代主神の魚釣りと海の神が結びつけられて同一視された。また父神である大国主命が大黒様と同一視されたために、親子の神であるとも言われる。美保神社は事代主神を主祭神としており、全国のえびす神社の総本宮となっている。
ただしイザナギとイザナミの国造りの際に生まれた「蛭子命」をえびす神とみなす場合もあり(蛭子命は最終的に流し捨てられたため、「海からやってくる稀な外来物」を想起させる)、その系統は西宮神社を総本宮としている。

アクセス:島根県松江市美保関町美保関