緑風荘

【りょくふうそう】

昭和30年(1955年)創業の温泉旅館。座敷わらしの現れる宿として有名。特に母屋の奥座敷に当たる部屋「槐(えんじゅ)の間」の出現が有名で、その姿を見た者は幸運になると言われる。そのためこの部屋は3年先までの予約が瞬く間に埋まってしまうほどであった。しかし平成21年(2009年)に旅館は全焼する。焼け残ったのは、座敷わらしの正体と伝えられる、この旅館の主人である五日市氏の祖先である“亀麿”を祀る小社のみであった(小社は宿の中庭にあり、火元のボイラー室のそばにあったにかかわらず焼失を免れている)。

伝承によると、五日市氏の祖先は南北朝時代の人物で、南朝方に与していたために東北へ逃れたとされている。この金田一の地へ辿り着くと、二人の息子のうち兄の亀麿が病死、その間際に「家を守る」という言葉を残したという。つまり、緑風荘の座敷わらしは妖怪というよりは、むしろ家霊・守護霊的な存在であると考えるべきだろう。

ただ目撃者の証言をまとめると、小さな男の子が部屋や廊下を走り回ったり、宿泊者に遊んでくれるようお願いしたり、ちょっとした悪戯をしてみたりと、一般的な座敷わらしの伝承と同じような行動を取っている。また姿は見えないが、走り回る音、その他物品が動くなどのポルターガイスト現象もあるという。そして一番奇怪な記録としては、漫画家のつのだじろう氏が寄贈した、色紙に描かれた座敷わらしの絵の目玉が動いた瞬間が映像に映っていたというものもある。

緑風荘は2016年5月に営業再開をしている。

<用語解説>
◆座敷わらし
東北地方、特に岩手県で伝承される妖怪。幼児の姿をしており、座敷に住み着き、時折その姿を現すことがある。子供の姿をしているせいか、子供が遊んでいると現れることが多い。座敷わらしが住み着いている家は富み栄えるが、出て行ってしまうと没落すると言われており、家運にまつわる精霊であると考えられる。ただし緑風荘のケースのように、特定の人霊と目されることは稀である。

◆ポルターガイスト
ドイツ語で「騒々しい霊体」の意。姿は見えないが、家財などを動かしたり、ひどい場合は物品が宙を飛んだりする現象。原因は霊であるとされているが、若い女性が関係していることが多いため、何らかの超能力が発動しているのではないかという説もある。

アクセス:岩手県二戸市金田一字長川