桔梗塚

【ききょうづか】

関東鉄道常総線の稲戸井駅の間近、国道294号線沿いのバス停に生け垣で囲まれた場所がある。中を覗くと数多くの石塔が並んでいる。これが取手市にある桔梗塚である。

桔梗塚に葬られているのは、平将門の愛妾・桔梗御前とされる。ただしこの桔梗御前の存在は伝説上のものであって、史実としては不明な点が多い。むしろ桔梗御前に関する伝説は関東各地にあって、それぞれ独自の設定で語られていると言うべきである。最大公約数的な設定としては、平将門の愛妾であり、将門最大の秘密である“こめかみ”に関する情報を敵方に漏らしてしまったために死を迎えたとなるが、それすらも多少の異説があるともされる。

取手の桔梗御前の伝承は、この塚のそばにある竜禅寺に伝わるものである。桔梗御前は大須賀庄司武彦の娘とされ、将門の間には3人の子供がいたという。さらに薙刀の名手とされる。だが、戦勝祈願をした帰り道、この地で敵将の藤原秀郷に討ち果たされたのである。その後、この地は桔梗ヶ原と言われるようになり、このあたりに生える桔梗は花をつけないと言われている。

あるいは、図らずも将門の秘密であった“こめかみが動く者が本物の将門であって、他は影武者である”ことを敵方に漏らしてしまい、口封じのために藤原秀郷に討たれたともされる。いずれにせよ、この地が桔梗御前終焉の地ということになる。

ちなみに、桔梗の花が咲かないという伝説は、漢方薬として桔梗の根が使われることから、根が大きく育つように花が咲く前に摘み取ってしまうからだという説がある。

<用語解説>
◆平将門
?-940。親族との土地争いから、朝廷に対して反旗を翻して「新皇」を名乗り、関東一円を一時的に支配した。朝敵として討ち取られるものの、関東一帯の守護神として崇敬を受ける。

◆桔梗御前の諸説
桔梗御前の出自については、藤原秀郷の妹とする場合もあり、妹を使って敵情を探らせ、最終的に後難を怖れて秀郷が殺すことになる。
また本当に将門を裏切って秀郷に秘密を教えてしまったために、将門によって誅せられたとも言われる。
さらに桔梗御前は愛妾ではなく、将門の母親にあたる人物という説も存在する。

アクセス:茨城県取手市米ノ井