照手姫水汲井戸
【てるてひめみずくみのいど】
説経節で有名な『小栗判官』の物語ゆかりの地が大垣市内にある。
小栗判官の許嫁となった照手姫であるが、父の横山大膳がこれを憎んで判官を毒殺、照手を相模川に沈め殺そうとする。川に流されただけで命拾いした照手は、村君太夫に救われるが、嫉妬した姥に売り飛ばされ諸国を転々とし、最後に美濃国青墓宿の万屋に買われた。
万屋の主人・君の長夫婦は照手に常陸小萩という名を付け、遊女として客を取るように迫る。しかし小栗への貞節を守ろうとする照手はそれを断り、代わりに下水仕として16人分の仕事をこなすことを命ぜられる。一度に馬100頭の世話をさせられ、さらに馬子100名の飯の支度をさせられた。さらに笊で水を汲むように強要されるなどの無理難題を押しつけられ、3年の月日を過ごしたという。その照手姫が水仕事に使っていたという井戸が残されている。かつてこの付近に青墓宿の有力者の屋敷があったものと思われ、それがいつしか『小栗判官』の物語と結びついたのであろうと推測できる。
やがて、蘇生したものの生ける屍のようになった小栗は餓鬼阿弥と呼ばれ、道行く人々に車を曳いてもらいながら熊野へ向かう。そして青墓の万屋の前に辿り着く。車を曳けば仏の功徳になると知った照手は、君の長から5日の暇をもらい、お互いの素性も知らぬまま、狂女のなりをして大津まで車を曳いていくのであった。
<用語解説>
◆小栗判官
室町時代に常陸国にあった豪族・小栗氏がモデル。二人の出会った相模や、車曳きで辿り着いた熊野などに伝承が複数存在する。
◆説経節
語り物の文芸であり、仏教の教義(主に因果応報)が色濃く入った物語を節回しを付けて披露した。有名なものとして、『小栗判官』『山椒大夫』『苅萱道心』『俊徳丸』などがある。
アクセス:岐阜県大垣市青墓町