蛇穴

【じゃあな】

その名の通り、かつて大蛇が棲んでいたと言われる穴。鍾乳洞の東端にあたり、奥行き25mの洞穴であり、そこから湧き出る水は岐阜県名水50選に指定されている。

昔、この穴には乙姫様(龍神・大蛇)が住んでおり、村人が行事で膳や椀が必要になると、この穴の前に希望の人数を書いた札を置いておく。すると翌朝には人数分の膳や椀が揃えてあったという。

ある時、村人が鼓を5つ貸してもらった。ところがあまりに珍しいものなので、1つを隠して4つだけを返した。するとその年はひどい日照りで、田畑の水は涸れ、土地がひび割れるほどになってしまった。乙姫様の怒りと思った村人は、早速雨乞いをおこなった。やがて黒雲が湧いて激しい雷雨が降ったが、今度は辺り一帯に落雷があり、たちまち火の手が上がりだした。さらに蛇穴からは大蛇が這い出してきたかと思うと、黒雲を目指して空に飛び立っていったのである。それ以来、いくらお願いをしても椀も膳も出てこなくなったという。

<用語解説>
◆椀貸伝説
全国各地に見られる伝説の類型。水場において、膳椀を人数分貸し出して欲しいと頼むと、その通りのものが貸し出せた。しかし村人の誰かがその1つを返さなかったために、その後は頼みを聞いてくれなくなるという展開である。

アクセス:岐阜県郡上市和良町野尻