二つ葉栗
【ふたつばぐり】
昭和32年(1957年)に岐阜県天然記念物に指定された栗の木である。「二つ葉」の名の通り、葉が2つに分かれるという変わった木であり、葉の付け根から分かれる場合もあれば、葉の中ほどで二つに割れてY字のような形になるものもある。このような不思議な葉の形になる原因についての伝説が残されている。
牧口という集落に源次という男がいた。他人の土地のものを勝手に盗ったりするので、村の者から随分と嫌われていた。ある時、隣家の者が立山へ参拝に行ったのをこれ幸いに、薪を持ち去っていった。その途中、源次は風で頭巾を飛ばしてしまい、探したが見つけることが出来なかった。
数日後、隣家の者が源次を訪ねてきた。立山で源次に会ったという。薪を背負った源次が正面から近づいてきたかと思うと、突然、体勢を崩すと煮えたぎる地獄に落ちてしまったというのである。そして隣家の者は、証拠にとその時拾い上げた頭巾を見せた。それは薪を盗んだ時になくした頭巾であった。これにはさすがの源次も恐れをなし、前非を悔いて真人間になることを誓った。それ以降、盗みを働くこともせず、さらには人助けもおこなって善行を積み、念仏を毎日唱える生活を続けたという。
そして年月が過ぎて宝暦11年(1761年)の冬、いよいよ臨終という時に、源次は「もし家の前の栗の木の葉が二つに割れるようになったら、その時は私が極楽へ行ったものと思って欲しい」と告げて亡くなった。その翌年から、その栗の木の葉は葉先が割れるようになったという。
アクセス:岐阜県高山市清見町三日町