玉置神社

【たまきじんじゃ】

大峯山系に属する玉置山の山頂付近に鎮座する神社である。その歴史は古く、第10代崇神天皇の御代に王城火防鎮護と悪神退散を願って創建されたとする。その後修験道の発展と共に大峯奥駆道の重要な霊場となり、現在でも熊野三山の奥の院と称している。

本殿から離れた、山頂へ向かう山道の途中にあるのが末社の玉石社である。柵に囲まれた細長い土地に白っぽい玉石が敷き詰められ、その奥に黒い自然石が3本の巨木に囲まれるように少しだけ顔を覗かせているだけの場所で、祠などはない。この古代の祭祀場を思わせる場所が、玉置神社の最重要の聖地と言われている。この黒い石が「玉石」と呼ばれる御神体であり、玉置神社創建の元となった地であると同時に、一説では“玉置”の名の由来になっているとされる。また神社創建よりも遙か昔、神武東征の折に神武天皇が通りがかり、この石の上に神宝を置いて長髄彦との戦いの勝利を祈願したともされる。そして時代を経て役行者が神宝(宝珠)を埋めて祀ったとの伝承も残る。

そして玉置神社で最も有名な伝承は、「神様に呼ばれないと辿り着けない」という不思議な話である。とにかく邪心を持って訪れようとしても何らかのトラブルに見舞われて行き着かないと言われ、神を蔑ろにする言動・我欲に満たすための参拝・観光目的の物見遊山などは以ての外である。実際、しっかり計画していたにもかかわらず、病気や怪我、天候不良、果ては乗物や機器の異状によって参拝が叶わなかったという話を耳にする。日頃の心がけから正しくしていないと受け入れてくれないらしい。ただし「鳥獣はその限りに非ず」ということ。実に厳しい神様である。

アクセス:奈良県吉野郡十津川村玉置川