七ツ石
【ななついし】
住宅地の一角に場違いなように18個の巨石がある。これが七ツ石である。別名を剣研石(けんとぎいし)という。『尾張名所図会』にも現在と同じ様子で描かれており、昔から有名な伝承地であったと言える。
東征から戻ってきた日本武尊はしばらく尾張に滞在し、東征前に約束を交わしていた宮簀媛と結婚する。そして伊吹山に荒ぶる神があることを聞いて、それを退治しようと、草薙剣を宮簀媛に預けて旅立った。その途上、日本武尊は自分の持っていた剣を研いだという。その研いだ石が七ツ石である。
これらの石の一部は、表面が平滑に加工されている痕跡を残しており、自然石ではないことは明らかである。おそらく昔の人々は、その滑らかな平面を見て“砥石”を連想し、この地にあった英雄と結びつけたのであろうと推測出来る。しかし現在の研究では、これらの石は横穴式石室を破壊し、放置したものであるという説で落ち着いている。
<用語解説>
◆『尾張名所図会』
尾張八郡の地誌。前編は天保15年(1844年)刊行。後編は明治13年(1880年)の刊行。
◆草薙剣と宮簀媛
伊吹山の神によって病を得た日本武尊は、その後尾張の宮簀姫の許へは戻らず、伊勢の能褒野で亡くなる。そのため宮簀媛は草薙剣を祀るために社を設ける。それが現在の熱田神宮である。
アクセス:愛知県一宮市大和町戸塚