多度大社
【たどたいしゃ】
伊勢国の二之宮とされ、北伊勢地方の総鎮守と言われる。特に主祭神が天照大神の第三子の天津彦根命という点、また伊勢神宮参拝のための街道沿いに鎮座している点から、北伊勢大神宮とも呼ばれるほどの崇敬を集めている。実際、多度大社へ参拝しなければ、伊勢神宮参拝も片参りであるという俗謡も存在する。
多度大社はまた多度両宮とも称するが、本宮である多度神社と共に、別宮である一目連神社も多くの崇敬を集めているためである。一目連神社の祭神は天津彦根命の子である天目一箇命であるが、本来は片目の竜であり、天候、特に雨と風を司る神であるとされている。
多度大社が創建される以前は、その奥にある多度山が信仰の対象となっていたとされる。この山は伊勢湾海上からよく見える山であり、おそらく海で生業を立てていた人々は、その海の具合を多度山の状況で予測していたのではないかと考えられている。それが天候を司る神を後年に神社に祀った背景にあると考えることが出来るわけである。
この一目連神社の社殿であるが、扉がない。これは龍と化した神がいち早く神威を示すために、自由に出入り出来るようにするためとされている。このように激しい一面を見せる神である故にか、伊勢湾岸一帯の地方では、一目連の神が神殿を出て活動すると大風になると言い伝えられている。
<用語解説>
◆天津彦根命
素戔嗚尊が高天原を訪れ、天照大神に対して悪心を抱いていない証として、互いの持ち物を交換することで生まれた8人の御子神(八王子社の祭神)の一人。天照大神の御子神は男5人であり、その3番目の子が天津彦根命である(素戔嗚尊の御子神は女3人。宗像三女神である)。天津彦根命の名はこの部分でしか登場しない。
ただし多くの地方豪族がこの神を一族の祖神として崇めており、多度大社のあるあたりを治めた桑名首(くわなのおびと)もそのうちの一つである。
◆天目一箇命
製鉄・鍛冶の神とされ、片目の神とされる(鍛冶の仕事で片目を失明することが多いためと考えられる)。
アクセス:三重県桑名市多度町多度