魔王石

【まおういし】

京都五山の第四位に当たる東福寺は、かなり大きな敷地を有する。そして紅葉で有名な通天橋をはじめとする見どころも多い。その観光スポットの一つである三門のそばに、寺院のはずなのになぜか鳥居が並んだ場所がある。ここが東福寺の鎮守社にあたる【五社成就宮】である。

この神社の名の由来であるが、石清水・賀茂・稲荷・春日・日吉の5社の神を祀っているために名付けられたものである。その本殿に行くためには、鳥居に囲まれた参道を登っていかなくてはならない。そして間もなく本殿というところでちょっとした広場がある。そこにはなかなか不思議なものが建っている。十三重の石塔(重要文化財)である。現場には特に何の立て札も立てられていないが、公式HPによる と東福寺創立祈願のために建てられたものらしく、相当古いものらしい。そのような場所に、さらにそこには【魔王石】と呼ばれる石を祀った祠がある。

実は、この十三重の石塔の正式名称は「比良山明神塔」、即ち比良山の魔王(天狗)を祀ったものである。東福寺を建立したのは九条道家だが、それに着手する前、病に伏せっていた時に、家来の女房に「藤原の祖先」を名乗る比良山の魔王が憑いて、道家の病の元凶を教え、病を癒したとされる。このような由来のせいか、厄除けを祈願すると良いらしい。

<用語解説>
◆東福寺
嘉禎2年(1236年)に九条道家が建立を発願。東大寺と興福寺から名前を取る。建長7年(1255年)完成。

◆九条道家
1193-1251。摂政・関白・左大臣を歴任。鎌倉4代将軍・藤原頼経の実父。鎌倉幕府と関係が深く(実母は源頼朝の姪)、承久の乱後に朝廷の実権を握る。

アクセス:京都市東山区本町十五丁目