乙和池

【おとわいけ】

大佐渡スカイラインの途中、車で進入するのが躊躇われるほど細い道をさらに奥へ1km弱ほど進むと、乙和池がある。周囲は鬱蒼とした森に囲まれており、青みがかった池の中央には日本最大規模の高原湿原性浮島がひっそりと佇む、神秘的という言葉しかない美しい池である。

この池には蛇婿入りの典型と言える伝説がある。この池のある山の麓に長福寺という寺がある。その寺に昔、一人の美しい女性がやって来て、そのまま下働きをするようになった。どこの者か素姓は分からなかったが、名は“おとわ”といった。

ある時、おとわは山へ山菜を採りに行った。いつしかおとわは女人禁制とされる場所の近くまで来てしまっていた。慌てて帰ろうとして足を滑らせたので、やむなく近くの小さな池で腰巻の裾に付いた泥を洗い落としていた。すると小さな池がみるみる大きくなり、おとわのいる場所だけが浮島のようになると、池の主を名乗る大蛇が現れて「池の主となれ」と言ってきた。驚くおとわは大蛇に泣く泣く頼み込んで、3日間だけ猶予をもらい、長福寺へ戻ったのである。

3日後、おとわは決心すると、再び山へ向かった。すると遠くから蹄の音がして、白馬に乗った貴公子がやって来ると、おとわを鞍の前に乗せてそのまま山へと駆け上っていったのである。それから7日間は山は霧に閉ざされ、最後の日には大雨となった。その後村人が山の池へ行くと、池には新しい浮島が出来ていた。人々は池の主が代わったので浮島が出来たのだろうと噂した。そしておとわが池の主の許へ発った日には、供物を池に捧げる祭りを執りおこない、今でも祭りは続けられている。

アクセス:新潟県佐渡市山田