宗禅寺 鶏の墓

【そうぜんじ にわとりのはか】

広瀬川べりに建つ宗禅寺は、室町期に仙台の地を治めていた粟野氏の菩提寺である。この寺の山門を入ってすぐのところに“鶏の墓”と呼ばれる塚が存在する。

寛文13年(1661年)、宗禅寺の住職は不思議な夢を見た。びしょ濡れの鶏が現れて「私は檀家の庄子某宅で飼われていた鶏だが、一緒に飼われている猫が一家を殺そうと企んでいるを知って三日三晩鳴き続けた。ところが主人は夜鳴きする鶏を不吉だと言って、私を殺して広瀬川に投げ捨ててしまった。私の屍は宗禅寺の崖下の杭に引っかかっている。どうか主人達の命を救いたいので、朝飯の前に行ってこのことを伝えて欲しい」と言った。

住職が川へ行くと、果たして鶏の死骸が引っかかっていたので、慌てて庄子某の家を訪ねた。ちょうど庄子某の家ではこれから朝飯を食べようとしていたところであった。住職が夢の話をしている時、汁鍋の蓋が開けられており、一匹の猫が何気ないそぶりで鍋を飛び越した。住職は、猫が尻尾を鍋の中につけるのを見逃さなかった。その場を離れた猫を追って住職が竹藪に入ると、猫が竹の切り株に尻尾を入れると、また家へ向かって行った。怪しんで切り株の中を覗くと、そこには蜥蜴や虫が腐って毒液となっていたのである。全てを理解した住職は子細を庄子に伝えると、庄子は鶏を殺したことを悔いて、懇ろに弔ったという。

ただしこれには異説がある。この怪異は庄子宅ではなく宗禅寺で起こったものであり、住職が夜鳴きする鶏を殺し、隣家の者の夢枕に鶏の霊が現れて住職の危難を告げ、住職の朝食の膳椀に猫が毒を仕込むという展開となっている。さらにその後日譚として、竹藪に南瓜が生えたので住職が取って食べようとすると、鶏の霊が夢枕に現れて「毒があるから食べるな」と告げた。不審に思った住職が掘り起こしてみると、南瓜の根が猫の髑髏から生えていたことが分かったという。

鶏の墓には、寛文13年に庄子太郎左エが建立したことが刻まれている。そして正面には「卍不是人間之塔(これは人間の塔ではない)」と彫られている。

アクセス:宮城県仙台市太白区根岸町