医王寺 蟹塚

【いおうじ かにづか】

医王寺境内の鐘楼のそばに蟹塚がある。これにには次のような伝説が残されている。

医王寺の鐘は朝と夕に撞かれたが、その音を怖がって白鷺が寄りつかないために、境内の池に棲む魚や蟹は捕られることもなく暮らすことが出来ていた。

ある時、近隣から火の手が上がり、やがて医王寺にも延焼した。山門を焼き、やがて火が鐘楼に迫ってきた時、池から何百もの蟹が現れて鐘楼に上ると泡を出して火を消し止めようとした。火は猛威を振るい多くの蟹が焼けて死んでいったが、一向に蟹の数は減らなかった。そして翌朝、鎮火した後の境内には鐘楼だけが焼けずに残っており、その周りには焼けた蟹の死骸が大量にあったという。

寺では、命がけで鐘楼を守った蟹の徳を後世に伝えるべく塚を建てた。そしてそれ以降、医王寺の池に棲む蟹は、火で焙られたかのように背中が赤いものばかりになったという。

 

アクセス:神奈川県川崎市川崎区旭町