千光寺 玉の岩
【せんこうじ たまのいわ】
尾道の観光ガイドの表紙を飾る最も有名な光景が、この千光寺から海を眺めたものであろう。尾道観光の象徴であるといっても過言ではない。
千光寺は山肌にへばりつくように建てられており、その境内には多くの巨岩がある。そのいくつかには名前が付けられており、それぞれ曰くの伝承がある。中でも“玉の岩”と呼ばれる巨岩には、寺名にまつわる伝承が残されている。
“玉の岩”という名の通り、かつてはその岩の上に如意宝珠があり、夜ごと光を放ち、それは海からもはっきりと見えるほどであったという。ある時、異国人がこの寺を訪れて、この岩を買い取りたいと申し出た。住職は断ったが、異国人はそのやりとりから、住職はこの玉のことを知らないと確信した。そして岩に登ってその玉を盗み出したのであった。しかし玉を持って帰る途中、海にそれを落としてしまったという。
この玉の岩にある如意宝珠が光り輝くことから「大宝山千光寺」、また玉が沈んだ辺りを「玉の浦(現在の尾道港)」と呼ぶようになったとされる。高さ15mの“玉の岩”の天辺には、かつて宝珠があったことを示す窪みが今でもある。また、この宝珠の光を反射させて海を照らしていたとされる「鏡岩」の伝承があったが、平成12年(2000年)にその所在が明らかになっている。おそらく海上の要衝にあって、灯台の役目を果たしていた時期があったものと推察できる。
アクセス:広島県尾道市東土堂町