櫻山八幡宮 狂人石

【さくらやまはちまんぐう きょうじんせき】

高山にある櫻山八幡宮は、秋の高山祭りで有名な神社である。その起源は古く、仁徳天皇の御代、飛騨一帯で猛威を振るっていた両面宿儺(りょうめんすくな)を退治するため征討軍が組まれ、必勝祈願のため難波根子武振熊命(なにわのねこたけふるくまのみこと)が先の帝である応神天皇(八幡神)を祀ったのが始まりとされる。

江戸期に入り、高山領主となった金森氏により元和9年(1623年)に再興され、高山北部一帯を氏子と定めて鎮守となす。このように由緒正しく且つ町の人々の信仰を集める神社であるが、その境内末社である秋葉神社の神殿脇に不自然な形の巨石が置かれている。それが狂人石である。

最近立てられた駒札によると、この神域や境内を汚す行為をした者がこの石に触れるとたちまち発狂してしまうという古来よりの言い伝えがあるらしい。神域を汚す者に対して神罰を下すという伝承は限りないほどあるが、具体的に<石に触れると発狂する>という伝承は他に例がなく、またその実物が現存するという話は聞いたことがない。

<用語解説>
◆両面宿儺
『日本書紀』仁徳天皇65年の記録にある、飛騨地方に蟠踞した異人。1つの胴体に顔が2つあり、それぞれ4本の手足を持つとされる。正史においては悪の存在であるが、飛騨地方では地域の開拓者的存在として英雄視されている向きがある。

◆難波根子武振熊命
神功皇后に仕えた将軍とされる。神功皇后に謀反を起こした忍熊王をを打ち破る、飛騨の凶賊である両面宿儺を滅ぼすなどの功績を挙げる。和迩氏の祖先とされる。

◆金森氏
初代・長近が天正14年(1586年)に入国。関ヶ原の戦いの功績により、江戸幕府以降も飛騨一国を領国とする。櫻山八幡宮再興時の領主は3代・重頼。6代・頼時の時、元禄5年(1692年)に高山から出羽国上山へ転封となる。それ以降、飛騨国は幕府の直轄地として代官が置かれた。

アクセス:岐阜県高山市桜町