高山のメンヒル

【たかやまのめんひる】

大洲市街の北西にあたる山間、かなり入り組んだ道を上っていった場所に突然現れる巨石がある。それが高山のメンヒルである。

“メンヒル”という語はケルト語由来で、“長い石”という意味を持つ。ヨーロッパ、特にフランスのブルターニュ地方に多く見られる古代の巨石記念物の一種である。墓石であるとか、信仰の対象であるとか推測されているが、実際の目的や用途は明確ではない。ただ自然石を移動させるなど、多少人の手が加えられていることには異論がなく、何かしらの意味があってそこに置かれているのは確かである。

高山のメンヒルも高さ4.75m、幅2.3m、厚さ0.66mという非常に平たい自然石が1つだけで立っている状態なので、何らかの自然現象でこの場所にあるとは考えにくい。まさに自然と調和しない、忽然とそびえ立つ不可思議なオブジェである。その大きさや偉容ぶりに、鳥居龍蔵が「東洋一のメンヒル」と称したのも頷ける。

昭和3年(1928年)に鳥居龍蔵によってメンヒルとして広く知られるようになった巨石であるが、それ以前は石仏として認知されており、“高山の石仏”と呼ばれていた。今でもメンヒルの前には石塔が置かれ、仏式の参拝がなされている様子が分かる。案内板にも「前面を仏とし、背面を神(権現様)として」いると記載されており、目いぼを治すご利益があったという。さらに「藩命によって、久米喜幸橋の石材に用いられたが、一夜にして元に戻った」という不思議な民話が残されているとの説明もあった。これも各地に残されている、信仰対象となっている石や木の霊験譚であると考えられる。

この巨石自体は、この神仏習合の信仰のためにこの地に運ばれてきたものではなく、それより前からあったものを神仏とみなして信仰対象としたものであるらしい。何の目的で置かれた巨石であるかは分からないが、時代を超えて見る者に畏敬の念を抱かせるだけの存在であることは間違いない。

<用語解説>
◆鳥居龍蔵
1870-1953。人類学者・考古学者・民族学者。東アジア一帯で数多くのフィールドワークをおこない、数多くの業績を残す。

アクセス:愛媛県大洲市高山