丸石神

【まるいしがみ】

ある意味、日本有数の謎ではないかと思っている物件である。何が謎かと言えば、とにかく山梨県一帯に数百か所も祀られているにもかかわらず、他地域ではほとんど全く見ることが出来ず、しかもその出自に関する伝承もない。そして信じられないほど真球に近い形をしていながら、自然の産物なのか(自然状態でもこのような形の石が出来ることは可能であるという)、あるいは人の手が加わったものなのかも分からない。そして最も驚くべきことは、地元の人にとってこの丸い石がある風景が日常であるという事実である。それ故に、観光の対象ともなることもなく、また本格的な学術調査もほとんどなされたことがない。言うならば、日本人の石に対する自然崇拝が原形のまま残されていると言ってもおかしくない印象なのである。

この丸石神信仰と言えるものが見られるのは、山梨県一帯とその隣接エリアだけに限られる。特に多いとされるのは、山梨市一帯であると言われている。最も大きい丸石神とされるのは、山梨市七日市場にある。ここのものは台座に置かれている(その台座自身も丸石なのだが)が、そのまま地べたに置かれているもの、下手をすると石垣状になって既に祀られている状態ではないものまで、ありとあらゆる形で散見することが出来る。言うならば祀り方のルールすらない。

さらに言うならば、置かれている場所もまちまちである。多くは道祖神のように道路の辻や人の集まる公共の施設の近くにあるが、神社の境内にあったり、屋敷神よろしく家の敷地内にあることもある。何らかの信仰の対象であることは理解できるが、特定の宗教や神に限定されることもない(というよりも、丸石神という呼称も便宜上ものであり、地元でも統一された呼び名があるとは思えない)。あまりにも素朴で自然すぎるとしか言いようがない。

アクセス:山梨県山梨市七日市場