蚶満寺
【かんまんじ】
かつての景勝地・象潟の蚶満寺は、円仁の創建であるが、それ以前に神功皇后が三韓征伐の途上でシケに遭ってこの地に流れ着き、皇子(後の応神天皇)を出産したという伝承が残されている。安土桃山時代に曹洞宗に改められ、以後、名僧を輩出。また松尾芭蕉をはじめとする文人墨客も多数訪れている。
蚶満寺には“七不思議”と呼ばれるものが存在する。とりわけ有名なものは「夜泣きの椿」と呼ばれるもの。寒中の夜中に花を咲かせ、寺の周辺で凶事が起こる前後に夜泣きするという言い伝えが残る。他には「猿丸大夫姿見の井戸」「弘法投杉」「あがらずの沢」「木登り地蔵」「北条時頼咲かずのツツジ」「血脈授与の木」がある。また七不思議以外にも、島原から移転の際に象潟沖で漂着して置かれたという「親鸞上人腰掛け石」がある。
<用語解説>
◆象潟
「東の松島、西の象潟」と称された、入り江に大小の小島が浮かぶ景勝地。しかし文化元年(1804年)に起こった大地震によって土地が隆起して、干潟となった。現在でも小島だった部分は小さな山状となって残されている。干潟を開墾しようとした本荘藩に対して蚶満寺住職が反対し、閑院宮家に祈願寺許可を働きかけ、土地を保全したためである。
◆円仁
794-864。第3代天台座主。慈覚大師。唐より帰朝後、東日本各地に500あまりの寺院を建立・中興したとされる。
◆神功皇后
第14代仲哀天皇の皇后。三韓征伐は4世紀頃の出来事とされる。
◆松尾芭蕉
1644-1694。芭蕉が象潟を訪れたのは『奥の細道』の紀行の途上(最北端の訪問地)。象潟の風景を絶賛している。
◆猿丸大夫
生没年不明(実在についても不詳)。三十六歌仙の一人。
◆北条時頼
1227-1263。鎌倉幕府第5代執権。後に出家して最明寺入道と号す。善政を敷いたことから全国各地を巡り歩く回国伝説が生まれた。
アクセス:秋田県にかほ市象潟