鬼王神社
【きおうじんじゃ】
新宿歌舞伎町のはずれにあるのが鬼王神社である。正式には“稲荷鬼王神社”といい、大久保の稲荷神社に鬼王神社を合祀してできた神社である。この“鬼王”という名称を持つ神社はここにしかなく、節分会では鬼を悪者とせず、「鬼は内、福は内」と言って豆を撒くらしい。
この珍しい名前の由来であるが、大久保の百姓、田中清右衛門が熊野にあった鬼王権現を勧請してきたのが始まりであるという。ただ、現在熊野に鬼王権現は存在せず、神社で鬼王権現が祀られているのは全国でここだけと称している。
そもそも“鬼王権現”とは“月夜見命”“大物主命”“天手力男命”の三神である。実際、鬼王神社の祭神としてこの神々は祀られている。しかし、この“鬼王”という名にはもう一人、重要な人物の存在が見え隠れしている。それが平将門なのである。将門の幼名こそが【鬼王丸】なのである。だが、この神社の由来には全くその名は記されていない。
神社の前に置かれた手水鉢にはあやしい伝承が残されている。この手水鉢はかつて加賀美某の屋敷内にあったのだが、文政の頃(1800年代初頭)毎夜のように水音が聞こえるという怪異が続いた。そこでこの手水鉢を斬りつけたところ、水音はしなくなったが、家人に不幸が続いたため、この神社へ預けたという(天保の頃というから、ちょうど稲荷神社と鬼王神社が合祀された直後のことと思われる)。
怪しげな水音の正体であるが、この手水鉢の土台になっている鬼の仕業であるとされている。手水鉢を斬りつけたというのも、実際にはこの鬼を斬りつけたらしく、肩のあたりに傷跡が残っているとされているが、それらしき痕跡はあるものの、はっきりとした傷には見えなかった。ちなみにこの斬りつけた刀は“鬼切丸”という名が付けられ、手水鉢と同時に神社に納められたがその後盗難にあって行方知れずであるという。
アクセス:東京都新宿区歌舞伎町