太郎坊宮

【たろうぼうぐう】

神社の正式な名称は阿賀神社。祭神は正哉吾勝勝速日天忍穂耳命(まさかあかつかちはやひあめのおしほみみ)であり、その名にちなんで勝ち運のご利益があるとされる。

社殿は、赤神山と呼ばれる、岩肌がかなり露出した山の中腹に位置する。創建は聖徳太子の時代とされるが、それ以前より磐境信仰などの自然崇拝の対象となっていたと考えられる。その後、最澄が参籠して社を建立したとされ、修験道の信仰の地となっていった。

通称となっている“太郎坊”の名であるが、これはこの山の守護神である天狗の名前である(京都愛宕山の天狗も“太郎坊”という名であるが、同一ではないらしい。社伝によると、鞍馬山の次郎坊天狗の兄にあたるという)。最澄が社を建立する際に手助けをしたという伝承があり、社殿に参籠する修験者から天狗のイメージが形成されていったようである。天狗が守護神となっている寺社が結構あるが、ただ通り名としてここまで親しまれている場所は珍しいと言える。

太郎坊宮でとりわけ有名なものは「夫婦岩」である。高さが10mを越える巨石であり、それが神力によって二つに割れたとされる。しかもその二つに割れた岩の間を通らないと本殿に参拝できない。幅約80cm、長さ10mほどの狭い隙間をすり抜けて進むことになる。ところが、この岩の上こそが天狗の住処であり、善人が通ると何も起こらないが、悪人が通ろうとすると岩の割れ目が閉じて挟まれてしまうという伝説が残されている。

<用語解説>
◆正哉吾勝勝速日天忍穂耳命
天照大神と素戔嗚尊が誓約を取り交わした際に、天照大神の勾玉から生まれたとされる神。天照大神の第一皇子とされる。中つ国を治めるよう命ぜられるが拒否、大国主命の国譲りの後に再度降臨を命ぜられるが、今度は息子の瓊瓊杵尊にその大役を譲った(これが天孫降臨である)。
その名は“まさに勝った、私は勝った、日が昇る如く素早く勝った”という意味となる。

アクセス:滋賀県東近江市小脇町