石山寺

【いしやまでら】

西国三十三所観音霊場の13番札所。如意輪観音を本尊とする。「石山」の名称は、珪灰石と呼ばれる巨大な岩の塊の上に本堂があることから名付けられた。これらの特徴はことごとく、この寺の縁起にまつわるものとなっている。

天平19年(747年)、東大寺大仏を鍍金するために大量の黄金が必要となった。聖武天皇は黄金が得られるよう、良弁に吉野の金峯山で祈らせた。すると夢の中で、近江の湖南に観音菩薩を現れる地があるので、そこで祈るよう告げられる。良弁は石山の地に至り、巨岩の上に如意輪観音を置き、そこに草庵をこしらえた。すると、陸奥国で黄金が産出されたのである。ところが、如意輪観音が岩から離れなくなってしまい、良弁はやむなくそこに覆い堂を創建した。これが石山寺の始まりとされる。

平安時代になると、石山寺は観音信仰の主要な霊場となる。いわゆる「石山詣で」である。宮廷の女官を中心に、観音堂に参籠して一夜を読経をして明かすことが流行した。とりわけ有名なのは紫式部で、この石山詣での際に『源氏物語』の構想を得たと言われており、本堂の一角には、着想を得て物語を書き始めた場所という“源氏の間”と呼ばれる小部屋がある。その他にも清少納言や和泉式部など、女流文学の有名人が作品内で石山寺について言及している。

<用語解説>
◆良弁
689-774。幼い時に鷲にさらわれ、二月堂の杉の木にぶら下がっていたところを助けられ、僧となったという逸話を持つ。東大寺の前身である金鐘寺を聖武天皇より与えられ、その後、東大寺大仏建立の功績により東大寺の初代別当となる。

アクセス:滋賀県大津市石山寺