高浪の池
【たかなみのいけ】
白馬山麓国民休養地にある高浪の池は、その風光明媚さからキャンプ場をはじめとする施設が集まる観光地である。標高540m、周囲はおよそ1km、水深は13mばかりの池である。
近年この池が有名になったのは、この池で目撃されていた巨大魚の存在によってである。一般的には“浪太郎”(メスは“翠”)と呼ばれるこの巨大魚は、昭和30年代(1956~1965年)頃からこの池に隣接する施設管理人によって目撃されていた。しかしその名が全国的に知られるのは、昭和58年(1983年)に新聞掲載された写真である。そこには巨大な魚影が写っており、そのそばを泳ぐ他の魚の影と比べてもその大きさは異様であった。写真からの推定で、その巨大魚は体長約4mとされた。その後も昭和62年(1987年)に釣り客にその姿が目撃されるなどし、池のほとりに浪太郎のモニュメントも作られたが、平成に入ってからはその目撃情報もほとんど絶えているらしい。
この浪太郎の正体と考えられるのが、鯉の仲間であるソウギョ。かつて地元の人がこの池に鯉を放流しており、その中に紛れ込んだ個体が異常に成長したのではないかと言われている。またこの池は水深はそれほど深くないが、底には多量の水草が繁茂していてソウギョならば餌に困ることはないともされている。
しかしこの池には浪太郎の他にも、貸し椀伝説が残されている。
かつてこの地にある長者が暮らしていたが、あまのじゃくな性格で、領主の命令に背くこと数知れず、ついには捕らえられて処刑されてしまった。残された長者の妻はこの仕打ちを不服として一切合切の家財道具を持ち出すと、七日七晩掛けて高浪の池に運んで沈め、さらに自分も身を投げた。長者の家の道具がなくなると、里では冠婚葬祭の準備が整わなくなる不便が生じたが、いつしか「高浪の池へ道具を揃えてもらうよう頼むと、膳椀が池に浮いている」という噂が立った。里の者はそれを借りていたが、ある時、椀の蓋を壊したためにそれだけ返さずにいたところ、それ以降いくら頼んでも道具が現れることはなかったという。
<用語解説>
◆ソウギョ
中国原産の鯉の仲間。体長は2m近くにまでなるとされる。
アクセス:新潟県糸魚川市小滝