お化け灯籠
【おばけとうろう】
宮前区にある「川崎市青少年の家」の敷地内、ちょうど入口から建物の裏手に回ったところにある広場の片隅に、問題の灯籠はある。笠や火袋あたりの部分は残されているが、何故か竿と呼ばれる脚の部分がない。ただそれでも、大人の背丈に近い高さがあり、かなり巨大な灯籠である。
かつてこの周辺は畑が広がるだけの丘陵地帯であったが、昭和17年(1942年)になって歩兵第101連隊(東部62部隊)が東京から移転、広大な演習地が広がる土地となった。この移転時に東京から一緒に持ってこられたのがこのお化け灯籠であり、青少年の家は101連隊の将校集会所があった場所とされ、そこの庭に置かれた後、終戦後も処分もされずに放置されたまま時を経たようである。
歩兵第101連隊は、昭和15年(1940年)に再編成された連隊で、近衛歩兵第3連隊の兵舎のあった東京の赤坂に駐屯していた。その頃、この灯籠は夜な夜な赤坂の町を徘徊していたという伝説が残されており、これがお化け灯籠の名の由来とされている。そのため川崎への移転時に、もう二度と徘徊できないようにと脚の部分を埋めたのだという。あるいは脚の部分を切ってしまったという話も残されており、現在でもどちらが正しいのかは分からないらしい。そして灯籠が徘徊したという伝説も、何故か東京側では確認することが出来ず、果たして本当に灯籠が怪異を起こしていたかの確証はない。もしかすると、脚の部分も含めて大人の背丈を遙かに超えるような巨大な灯籠であるために「お化け」の名が冠せられ、怪異の伝説が後付けされた可能性(あるいは脚の部分を何らかの事情でなくしてしまったことに対する意味づけであったのかも)も捨てきれない。
アクセス:神奈川県川崎市宮前区宮崎