大泉寺 チャンコロリン石

【だいせんじ ちゃんころりんいし】

安中はその昔、中山道の宿場町として栄えていた。その頃の話。ある夜、いきなり街道をチャンコロリン、チャンコロリンとお囃子のような音を立てて移動するものが現れた。宿場の人々は驚いてこっそりと様子を探ると、音を立てて移動しているのは、一抱えもある大きな石である。しかもそれはひとりでに転がりながら動いている。この光景を見て、人々は怖じ気づいてしまったのである。

そのチャンコロリンと転がる石は毎夜のような現れる。ある者が恐る恐るその石の後を付けていくと、それが宿場にある大泉寺の境内に入っていく。正体が分かったので、退治しようと安中藩の侍が石を斬りつけたが全く動じる気配がない。さらにと鉄砲を撃ってみたが、少し穴が開いただけで何も変わらない。そのうち噂が近隣に広まり、安中の宿場に泊まろうという者がいなくなってしまい、宿は閑古鳥が鳴く始末となった。

宿場の人々は、とうとう大泉寺の住職に法力で封じてもらえないかと頼み込んだ。住職は快く引き受けると、お経を唱えながら石に近づいて、やにわに釘を打ち付けたのである。するとその夜から石は町に出ることもなく、またチャンコロリンという音も立てることもしなくなったという。

大泉寺の境内の片隅に、いまだにチャンコロリンの怪石が残されている。供養塔のようになっている,その真ん中の丸石がチャンコロリンの正体であるという。今でも刀傷や鉄砲傷が付けられているのが確認できる。そしてこの供養塔そのものがチャンコロリンの墓であるという、何とも奇妙なことになっている。

<用語解説>
◆大泉寺
創建は文安年間(1444~1449)とされる。中山道を挟んで安中宿本陣の向かい側にある。安中藩初代藩主・井伊直勝の母の墓がある。

アクセス:群馬県安中市安中