金谷神社 大鏡鉄
【かなやじんじゃ だいきょうてつ】
国道127号線から鋸山ロープウエー乗り場に入るところにある、小さな神社が金谷神社である。祭神は、豊受姫神、金山彦神、日本武尊。ある意味どこにでもある普通の神社であるが、ここに納められている「大鏡鉄」は一見の価値がある。
大鏡鉄は、直径が1.6m、厚さ11㎝、重さ約1.5tもある巨大な円盤形の金属器である。この金属器は、文明元年(1469年)に、この神社の沖合から引き揚げられたものであると伝えられる。しかも沖の海中で光るものを発見し、確かめたところがこの大鏡鉄であったと言われ、引き揚げようとしたが重くて運べず、金属を司る神である金山彦神を祀る金谷神社に祈願したところ、7日間海が荒れてその後2つに割れた状態となったので陸に揚げることが出来たという。この巨大な円盤状の金属器という珍しさもあるが、長らく海中に没していたにも拘わらず腐食していないことが奇異とされ、“鉄尊さま”と呼ばれ、不老長寿の効験があると近隣の信仰も篤い。
この大鏡鉄の正体を探る研究は古くからなされ、伝説としては“海龍王の釜の蓋”であるとされてきた。江戸時代後期になると、平田篤胤は『玉襷』の中で“日本武尊が東国征討で浦賀沖から房総半島へ船で渡った際に、船首につけていた大きな鏡”であると推論した(これが“大鏡鉄”の名の由来となっている)。さらに昭和42年(1967年)に文化財指定を受ける時と前後して科学的調査がおこなわれ、三浦半島において造られた鋳鉄であり、類似の遺物から製塩用の平釜であると考えると結論づけられた。ただし、100年単位の長期にわたって海中に沈んでいたという仮設は、その錆び具合から謎とされ続けている。
<用語解説>
◆『玉襷(玉だすき)』
平田篤胤著。文化8年(1811年)成立。
アクセス:千葉県富津市金谷