宇倍神社 双履石

【うべじんじゃ そうりせき】

因幡国一之宮である宇倍神社は、日本史上最初の宰相である武内宿禰を祭神として祀る神社である。360歳の長命を維持した人物であることから長寿のご利益、さらにこの宿禰の肖像と宇倍神社の拝殿が紙幣に度々採用されたため(伝説的廷臣とそれを祀る神社の組み合わせ図案として初めて採用された)に金運のご利益もあるとされる。

この神社が武内宿禰を祀っている理由は明白である。この地が宿禰の終焉の地であるからである。朝廷に250年近く仕え、既に360歳となっていた宿禰は因幡国へ下向し、沓だけを残して行方不明となってしまった。まさに昇天してしまったのである。このあたりの記述も彼の神懸かり的存在に由来していると思われるが、この脱ぎ捨てられた沓が石となって、この神社の境内に残されているのである。

本殿裏手に“亀金岡”と呼ばれる小さな丘がある。その頂上に“双履石”という一対の石がある。これが沓が石化したものである。この双履石から本殿が見下ろすことができる。つまりこの双履石は本殿の奥に位置する、この神社で最も重要な存在であることを示していると言えるだろう。

<用語解説>
◆武内宿禰
日本史上最初の宰相、古代有力豪族(葛城・平群・蘇我・巨勢)の祖、五代の天皇(景行・成務・仲哀・応神・仁徳)並びに神功皇后の補弼、そして360歳という長寿を保った。特に神功皇后の三韓征伐において中心的役割を担う。ただしその長命の記録故に非実在説もある。

◆双履石
道教の「尸解仙」という考えでは、死に際して沓と冠を残して地上より消滅して仙人になるという。武内宿禰が沓を残して昇天したとする伝承には、この神仙思想の影響が色濃く残されていると見てよいだろう。

アクセス:鳥取県鳥取市国府町宮下