高尾山薬王院

【たかおさんやくおういん】

ミシュランガイドで三つ星認定された観光地である高尾山にある寺院である。本格的な登山姿から家族連れ、ハイヒールを履いた女性まで、数多くの人がさまざまな目的を持ってこの山を訪れている。

薬王院は、現在は成田山新勝寺、川崎大師平間寺と並んで、真言宗智山派の大本山とされている。しかし創建は天平16年(744年)、聖武天皇の命を受けた行基によるとされる。その時に薬師如来が本尊として祀られたため、薬王院の名が付けられたという。大きく変わるのは、永和年間(1375~1379年)、醍醐寺の俊源が入って中興の祖となった時である。俊源は不動明王の化身である飯縄権現を本尊として祀り、修験道の山として隆盛していく。

高尾山といえば天狗のイメージであるが、これは現在の本尊・飯縄権現による。飯縄権現の姿は、白狐に乗り、剣と索を持った烏天狗であり、またの名を飯縄三郎天狗という。天狗は神使とされ、また高尾山全体を守護する存在として崇められている。参道には「天狗の腰掛杉」という、参拝する者を見守るために天狗が物見しているとされる杉の大木がある。また薬王院の境内には天狗にまつわるものをいくつも見ることが出来る。

<用語解説>
◆俊源大徳
醍醐寺の僧・俊盛の弟子とされるが、高尾山の縁起にのみ登場するため、その実在はかなり疑わしいとされる。

◆飯縄(飯綱)権現
起源は、信濃国の飯縄山での山岳信仰とされる。白狐に乗った姿はダキニ天と同じであり、妖術(外法)を使うとの民間伝承も多い。一方で、軍神として上杉謙信や武田信玄といった戦国武将の信仰が篤く、日光の輪王寺にも祀られているなど、徳川家からの庇護もあった。

アクセス:東京都八王子市高尾町