十宝山大乗院
【じっぽうざんだいじょういん】
鬼のミイラなるものがあるということで、実物を拝見しに十宝山大乗院という寺院に足を運ぶ。
とりあえずこのミイラの出自であるが、元々はある家の所有物であったのだが、大正14年(1925年)にこの寺院の檀家が5500円で購入したらしい(このミイラが下関市で売買されたという、売渡証書が存在しているとのこと。品名は【鬼形骨】)。ところが、この檀家は購入直後から原因不明の病となり、昭和4、5年頃にミイラを寺院に寄贈した途端に回復したという。さらに付け加えると、寄贈の際に当時の住職が「自分が子供の頃に山で出会った鬼が帰ってきたのだ」と語ったという。以来、この鬼のミイラはこの寺院で“仏様”として祀られるようになった。つまりこのミイラは寺宝として収蔵されているのではなく、信仰の対象として安置されているのである。
ところが、このような奇怪なものがあれば、当然の事ながら、学術の研究対象となる。実際、昭和初期に九州大学で鑑定されており、その結果としては『女性の人骨と動物の骨で構成されているのでは?』という事になっている。他の怪生物のミイラがさまざまな生物の剥製を工作して造型されているのと同じ結果である。学術的にはもっとも妥当な線である。
このミイラはご本尊に向かって右側に安置されている。しかも扱いはあくまでも“持仏”である。膝を抱えるように座った高さは約1メートル半。立てば2メートルは超えるようであるが、写真で見るよりは思った以上に小さかった。それでもその圧倒的存在感を静かに示しているように感じた。
アクセス:大分県宇佐市四日市