バタバタ石

【ばたばたいし】

“畳叩き”という名の妖怪がある。

夜中に畳を棒で叩くような音がするが、しかしその姿や正体は分からない。この怪現象は主に西日本で伝承されており、“バタバタ”という名で呼ばれることが多いという。

広島城下でもこの“バタバタ”と呼ばれる妖怪が現れたという記録が残されている。宝暦8年(1758年)、広島城下で最大規模の火災が発生した。その大火の後から怪現象が起こるようになったと言われる。冬の雨北風が噴出する時、筵や畳を叩くような音がするという。結局、このあたりにある、触ると痕が出来る伝わる石の精の仕業であるとされ、人はこれを“婆多婆多”と呼んだ。そしてこの妖怪が宿るとされる石を“バタバタ石”と呼んだ。

またバタバタ石の中から小人が現れて石を叩いているのを見かけた人があり、捕まえようとすると石の中に逃げ込んでしまったという。さらにこの石を持ち帰ったところ、顔に石と同じような痣が出来たために、元の場所に戻したところ痣が消えたという話も残されている。

バタバタ石があったのは六丁目という場所であり、現在の鷹野橋あたりであるとされる。タカノ橋商店街はこの伝説をもとに、商店街のシンボルとしてバタバタ石を置き、その名にちなんだ祭りをおこなっている。現在のバタバタ石は、一見道祖神のような、二人の子供が彫られたものになっている。おそらく石の精を模したものであると考えられる。

アクセス:広島県広島市中区大手町