岩神の飛石
【いわがみのとびいし】
群馬大学病院の西に「岩神稲荷神社」というちょっとした神社がある。この神社の背後には小さな山のような巨大な石が見える。これが“岩神の飛石”と呼ばれる巨石である。
高さが約10メートル弱、周囲が約60メートルという巨大な岩石である。相当遠景からでなければ石全体を写真におさめることは出来ず、神社の背後から見るとほぼ完全に社殿が隠れてしまう程の大きさである。
地質考古学的見地から言うと、この巨石は約10万年以上前に赤城山の噴火の際に飛び出した火山岩が冷え固まったものであり、さらに約2万年前に起こった浅間山の噴火による土石流によってこの地まで流されてきたものであると推測されている。
いわゆる「赤土」と呼ばれる関東ローム層が形成された時期と同じ頃に火山から噴出された岩石であるが故に、この飛石も全体が赤褐色に近い色をしている。この石にまつわる伝承の中で最も有名な話も、勿論この“赤色”が重要な役目を果たしている。
昔、石工達がこの岩を削って石材にしようと考えたことがあった。そこである石工がこの石にノミを当てて打ち込んだところ、その部分から血が噴き出してきたという。そして打ち込んだ石工は急死し、誰もこの石を削ろうという者はいなくなり、やがて祟りを鎮めるために神社(岩神稲荷)を建立したという(ちなみにこの神社は江戸期に藩侯が建てたものという話も残されており、この奇怪な伝承が具体的なものとして成立したのもその時代であったと推測できるだろう)。まさにこの石の色から連想された神意譚であると言える。
アクセス:群馬県前橋市昭和町