賽の河原
【さいのかわら】
佐渡島の北西の突端近く、大野亀と二ツ亀という景勝地に挟まれる位置に賽の河原がある。願(ねがい)という名の集落から海岸線に沿って遊歩道を約1㎞弱ほど歩いて行く。集落から賽の河原は全く見えない。それどころか、陸地から接近した場合、ほんの手前に行くまで全容を垣間見ることも出来ない。海に向かってだけポッカリと口を開けている海蝕洞穴が、佐渡の賽の河原なのである。
波と風の音しか聞こえてこない洞穴の中には、多数の地蔵が置かれて、さまざまなお供えが見られた。そして石ころだらけの浜辺には、明らかに人工的な石積みがなされていた。余計なものは何もない。ただひたすら鎮魂と祈りを捧げる場所なのである。
この賽の河原にまつわる伝承は、いずれも奇怪な話である。「賽の河原にあるものを持って帰ってはならない」という。それは石一つでもいけない。持って帰ると必ず家に不幸なことが起こるのだという。また「積み石を崩しても、翌日になるとちゃんと元通りになっている」とのこと。亡くなった子供の霊が夜中の内に積み直しているのだという。
<用語解説>
◆賽の河原
親に先だって亡くなった子供が石積みの苦を受ける、三途の川の手前にある河原。子供は親のために石を積み上げて塔を作ろうとするが、地獄の鬼がやってきてそれを崩していき、子供はまた一から石を積み上げる。その報われない努力を救うのが地蔵菩薩ということになる。ただしこの信仰は本来の仏教のものとは違い、民間信仰の発達したものである。
アクセス:新潟県佐渡市願