宿院頓宮 飯匙堀
【しゅくいんとんぐう いいがいぼり】
“頓宮”とは一時的な仮宮を意味する語であり、それが転じて、神輿の巡行の際に休憩を取る御旅所を指す。この宿院頓宮も御旅所であり、しかも現在は摂津国一之宮である住吉大社と和泉国一之宮である大鳥神社の両神社の御旅所とされ、それぞれ所縁の神社である波除住吉神社と大鳥井瀬神社が1つの社殿に祀られている。
ただ、元々は住吉大社の頓宮であったのが、明治時代になってから大鳥神社も御旅所として神輿を巡行させるようになったとされる。それ故に、この神社の境内には住吉大社にまつわる伝承地がある。それが飯匙堀である。
飯匙堀の名は、その形が“しゃもじ”に似ているところから付けられたとされる。ただ“堀”とされているが、実際は水のない空池である。
かつて彦火火出見尊が豊玉姫と結ばれ、姫の父である海神から潮満珠・潮干珠を授かった。いわゆる「海幸彦山幸彦」の神話であるが、その後、彦火火出見尊はこの2つの珠をそれぞれの場所に埋めたとされる。そのうちの潮干珠を埋めたのが飯匙堀だとされるのである。そのため、この堀にはたとえ大雨が降ろうとも全く水が溜まることがないと言われている。(ちなみに潮満珠は住吉大社の北にある玉出島に埋めたとされるが、現在の住吉大社摂社である大海神社前にある「玉の井」が比定されている)
<用語解説>
◆住吉大社
摂津国一之宮。全国の住吉神社の総本社とされる。黄泉の国から戻った伊弉諾尊が禊ぎをおこなった際に生まれたという住吉三神(底筒男命・中筒男命・表筒男命)と、その神託を受けて三韓征討をおこない、この地に住吉神を祀った神功皇后が主祭神となる。
◆大鳥神社
和泉国一之宮。通称は大鳥大社。全国の大鳥神社の総本社とされる。日本武尊が亡くなった後に変じた白鳥が、最後に降り立った地に建てられたとされる。主祭神は日本武尊。
◆彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)
父母は彦火瓊瓊杵尊(ひこほのににぎのみこと)と木花開耶姫(このはなさくやひめ)。豊玉姫との間に生まれたのが、彦波瀲武盧茲草葺不合尊(ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)であり、初代・神武天皇の父に当たる。
◆海幸彦山幸彦伝説
山幸彦(彦火火出見尊)が兄の海幸彦に借りた釣り針をなくしてしまい、それを探しに海神の宮殿に赴く。そこで娘の豊玉姫と結婚し、3年の月日を過ごした。その後、釣針を探し出し、海神より潮満珠と潮干珠を授かり、それを以て海幸彦を懲らしめて臣従を誓わせたという。
アクセス:大阪府堺市堺区宿院町