モーゼの墓
【もーぜのはか】
モーゼの墓は「モーゼパーク」の名前で、完全に観光地化している。この墓は、実は“三ツ子塚古墳”というれっきとした正式名称のある古墳である。この古墳は名前のごとく3つの墳墓が並んでいるが、その真ん中の一番大きな墳墓がモーゼの墓と目されているわけである(ちなみに残りの2つの墳墓は、妻である皇女と孫のものであるとされている)。問題の古墳の頂上へ行くと、【神人モーセロミユラス魂塚】と書かれた、古びた柱がぽつねんと立っている。
モーゼが日本へ来たのは、あの『旧約聖書』の中に記載されている波瀾万丈の半生の後のことであり、シナイ山から天浮舟(UFOの一種?)に乗って、押水にある宝達山に降り立ったという。そして時の天皇に拝謁し、その姫をめとり、500余歳の長寿を全うしたという(あるいは、あの十戒を受けたのは宝達山であったという説まで出てくる)。
このとんでもない説をブチ上げたのは、キリストの墓が日本にあると説いたのと同じ古文書『竹内文書』である。ただしキリストの墓と比べると証拠が明らかに少ない。モーゼが降り立ったという宝達山にある宝達神社に“菊の御紋”があったとか、終戦直後にアメリカ軍が調査に来たとか、近くから異常に大きな人間の骨が出てきたとか、とにかく未確認の情報は錯綜している。だが客観的な状況証拠はない。
<用語解説>
◆モーゼパーク
三つ子山古墳の登り口にある公園。「伝説の森公園」とも。休憩などはできるが、特にアトラクションはない。入場無料。
◆モーゼ
『旧約聖書』の“出エジプト記”に登場する、古代イスラエルの指導者・預言者。神の啓示を受け、エジプトにいて虐待を受けていた多くのヘブライ人を「約束の地」へ導く使命を与えられる。そして退去の時、追ってくるエジプト軍に対して紅海を二つに割って渡り歩いて逃れる奇跡を起こす。その後放浪は続くが(餓え苦しむ時には天より“マナ”が降ってくる奇跡も)、シナイ山で神より「十戒」を授かる。そして「約束の地」に入ることなく120歳で没する。
◆『竹内文書』
武内宿禰の孫にあたる平群真鳥が、25代武烈天皇の勅命を受けてまとめた文書とされ、真鳥の子孫を称する竹内巨麿が昭和3年に公開。神武天皇以前にも100代に及ぶ皇統があり世界を治めていた(宇宙生成よりも早くから存在したことになっている)、また歴史上に名を残す宗教指導者は全て日本で修行し、天皇に仕えたとする。キリストだけではなく、モーゼや釈迦も来日していることになっている。当然であるが、偽書として黙殺されている。
アクセス:石川県羽咋郡宝達志水町河原