弥山
【みせん】
宮島は厳島神社をはじめとして多くの神社仏閣が建ち並ぶ聖域であるが、その原点はこの島の中央部にそびえる弥山の存在である。伝承によると弥山を開いたのは弘法大師、大同元年(806年)のこととされているが、それ以前より信仰の対象となっていたと考えるべきである。標高535mの頂上付近には数多くの奇岩や巨岩があり、その山の形が須弥山に似ていることから「弥山」という名が付いたとされるなど、古来より自然崇拝に由来する山岳信仰がおこなわれていたと考え得る条件もある。
現在、弥山の頂上付近にあるのは、大聖院の本堂・霊火堂・三鬼堂などの伽藍と御山神社である。大聖院は弘法大師の開山とされている。特に霊火堂には、弥山七不思議の1つ「消えずの霊火」がある。この霊火は弘法大師が弥山を開山した際に焚かれた護摩の火を昼夜分かたず燃やし続けているもので、広島平和記念公園にある平和の灯の元火ともなっている。また、この火で沸かされた茶釜の湯は霊水と言われる。
三鬼堂は、弘法大師が開山の際に勧請したとされる三鬼大権現を祀る。三鬼大権現は追帳鬼神(ついちょうきしん)・時眉鬼神(じびきしん)・魔羅鬼神(まらきしん)の三神であり、大小の天狗を眷属に従える、神通力に長けた鬼神である。元は同じ山頂付近にある御山神社に祀られていたが、神仏分離令によって三鬼堂に遷された経緯がある。
大聖院から頂上の奇岩を巡るコースから少し外れたところに、御山神社(みやまじんじゃ)がある。ここが厳島神社の奥宮であり、主祭神である宗像三女神がこの地に降臨した場所であると言われる。
<用語解説>
◆弥山七不思議
1.「消えずの霊火」
2.「干満岩」海の干満に合わせて穴にある水が増減する
3.「曼陀羅岩」弘法大師が書いた文字を彫った大岩
4.「錫杖の梅」弘法大師が立てかけた錫杖から生えた梅
5.「竜灯の杉」現存せず
6.「時雨桜」現存せず
7.「拍子木の音」深夜に人のいない場所から拍子木の音がする
◆宗像三女神
『古事記』において、天照大神と素戔嗚尊のが誓約をおこない、素戔嗚尊の十拳剣から化生した神。多紀理毘売命・市寸島比売命・多岐都比売命。宗像大社の祭神であり、海上交通安全の神である。厳島神社に祀られているのも、海上交通の神であるためと考えられる。
アクセス:広島県廿日市市宮島町