盲神
【めくらがみ】
岩手県道35号線は通称“大槌街道”と呼ばれ、昔から釜石から遠野へ抜ける主要道路として人の往来があったとされる。その釜石から遠野への道のちょうど中間地点あたり、県道に面した場所に一つの社がある。それが、『遠野物語拾遺』第27話に残る盲神の社である。
昔、共に盲目の夫婦が幼い子供を連れてこの街道を歩いていた。ところがこの地に来た時、子供が誤って橋から落ちてしまう。目の見えない二人はそうとは知らず、子供を呼ぶが返事がない。そのうち二人は子供が橋から川へ落ちて流されてしまった事実を知ってしまう。二人の悲しみぶりは尋常ではなく、子供を失ってしまったら最早生きている意味がないとばかりに、二人とも橋から身を投げて死んでしまったという。そしてこの親子を哀れんだ村人は、祠を建てて祀るようになり、その祠を“盲神”と呼ぶようになった。今ではこの祠近辺の沢の水は、眼病にご利益があると言われている。
<用語解説>
◆『遠野物語拾遺』
昭和10年(1935年)に発表。明治43年(1910年)に私家版が出された『遠野物語』が世に広く知られるようになり、さらに遠野一帯の各地から寄せられた伝承をまとめた増補版。全299編からなる。
アクセス:岩手県釜石市橋野町第四十三地割