八百姫神社
【やおひめじんじゃ】
小浜には八百比丘尼ゆかりの地がもう一つある。それが空印寺からそれほど遠くない場所にある神明神社の摂社である【八百姫神社】である。この地は八百比丘尼が一時滞在した場所で、この神社は八百比丘尼を祀っていると言われている。
ところが八百姫神社に祀られているのは八百比丘尼ではなく、【八百姫】という全く別の人物なのである。ただ、この八百姫の出自も相当不思議なものなのである。八百姫は九州北部にある皇室ゆかりの一族の出身である。建保元年(1213年)に「海に出て、船が着いた場所に宮を建てよ」という伊勢神宮のお告げを聞き、供と一緒に船を出してたどり着いたのが、小浜の青井という所。そこに神社を建て(伊勢神宮のお告げで建てたアマテラスを祀る宮、すなわち“神明神社”である)、12人の子供を産んだという。
八百比丘尼の有力な生年として雄略年間(456~479年)がある。それから800年を加算すると1256~1279年。八百比丘尼の最晩年と八百姫の存命期間がまさに一致する。そして不老不死の妙薬である人魚の肉を16歳で食べた八百比丘尼は、当時の容姿のままであったという。そして小浜の地で12人の子供を産んだ八百姫も、漂着当時は20歳になっていなかったはずである。奇妙な一致なのかもしれない。
<用語解説>
◆神明神社
天照大神と豊受姫命を祀る。丹後国真奈井にあった神を伊勢度会に分霊する途中で、一時的に社を造ったのが始まりとされる。雄略天皇21年(477)創建。ここでも八百比丘尼と八百姫との微妙な関係が見えてくる。
アクセス:福井県小浜市青井