名古屋晴明神社
【なごやせいめいじんじゃ】
ナゴヤドームとは目と鼻の先、集合住宅棟が隣接する場所にある神社である。社地は狭く、社殿と社務所とわずかの境内がコンパクトに収められただけという印象すらある。ただこの神社の由緒はかなり古い。
寛和年間(985~987)頃に故あって安倍晴明が居を構えていたという伝説が残されていたことが、この地に神社が創建されたきっかけである。はじめに塚と祠が造られたが、それは安永7年(1778年)のことで、実に700年もの間隔が空いている。当時この地に蝮が大量に発生し難儀していたところ、かつてこの地にあった安倍晴明が呪術をもって蝮を封じたという伝説が伝わっており、それにあやかって祀るようになったという。そしてその効果は絶大で、祠が出来た途端、蝮がすっかり姿を見せなくなったとされる。その後、明治時代初期に京都の晴明神社から正式に分霊されたらしいが、実際に今のような社が完成したのは昭和32年(1957年)のことである。建設を進めたのは隣接する県営清明山住宅の入居者達で、神社の体裁を整えるために社殿と鳥居を設けたのである。
稀代の陰陽師である安倍晴明を祀る神社ということで、その霊験を示す不思議がいくつか報告されている。特に有名なものは移転にまつわる不思議で、陸軍が演習のために祠を移転させようとしたところ兵士が高熱を出したために取りやめになったとか、戦後には清明山住宅建設の際に祠を撤去したところ2度の事故が起こったとかの話が残されている。その他にも微妙な霊験譚がいくつかあるようで、神社境内でそのいくつかが紹介されている。
平成時代以降はいわゆる陰陽師ブームの影響で若い人の参拝が増えているという。
<用語解説>
◆安倍晴明
921-1005。従四位下播磨守。陰陽道を極め、時の天皇や摂関家より信任が厚かった。その超人的な術については『今昔物語集』をはじめとして、数多く伝承されている。また東海から関東地方にかけても安倍晴明が来訪して呪術を以て土地の者を災いから救ったという伝説が複数残されているが、実際に東国へ赴いたとの史実は確認できない。
アクセス:愛知県名古屋市千種区清明山