牛の宮

【うしのみや】

あたりに水田が広がる一角に、ぽつんと小さな雑木林が残されている。そばまで行くと、その中央部の小山のように盛り上がった頂上部分に「うしの宮」と刻まれた石柱が立っている。

昔、池之内町の農家に、6年の年季奉公で働きに来た少年がいた。まだ幼かったがよく働いた。主人もそんな少年を可愛がっていた。ところが3年経った頃、少年は病を得てぽっくり死んでしまった。

しばらくして主人の夢枕に少年が現れる。「3年の年季を残したまま死んでしまい、申し訳なく思っています。明日の朝、家の前を牛飼いが黒い牛を引いてやって来ます。その牛が残りの年季を勤めます」と言うと、消えてしまった。翌朝、主人は言われたまま家の前に出ると、やはり言われたように黒牛が通りがかった。不思議に思い買い取ったが、その牛は他の牛よりもよく働き続けたのである。そして3年経ったある日、牛は何の前触れもなく死んでしまった。その日は、ちょうど少年の年季奉公が明ける日であったという。

年季奉公を勤め上げたい少年の魂が牛になって、残った期日を働いたのであろうと皆は思い、主人も死骸を丁重に葬ったという。その牛を埋めた場所が、牛の宮であるとされている。

アクセス:奈良県大和郡山市池之内町