妙行寺

【みょうぎょうじ】

お岩の墓は西巣鴨にある。都電の新庚申塚駅を降りると、すぐ目の前の通りには“お岩通り”なる名が付けられている。

なぜ四谷で生活していたお岩様の墓が西巣鴨にあるのだろうか。その解答は妙行寺の門前にある石碑にあった。明治42年に四谷よりこの地に移転してきたとある。さらに“お岩様の寺”とまで刻まれている。既にこの当時から無視できない存在であったことがわかる。

そこそこ広い墓所の一角に、寺院とは不釣り合いな赤い鳥居が立っている。ここがお岩様の墓へ通じる入り口である。“お岩様の墓”と言っても、別に後世に建立された碑だけがあるわけではない。実際の墓石が信仰の対象である。しかもお岩様の墓は田宮家代々の墓が並ぶエリアにあるのだ。

妙行寺は元々四谷にあった時から田宮家の菩提寺であった。お岩の墓はその菩提寺に田宮家の代々の墓と共に置かれてあるわけである。これはお岩の存在がフィクションではなく、実在の人物であるという証である。だが、ひっそりとたたずむ他の墓とは別に、びっしりと周囲を取り囲むように並べられた卒塔婆や 特別に目立つように置かれている状況を見ると、やはり虚構の部分を担っているようにも感じる。

アクセス:東京都豊島区西巣鴨