【いぬはし】
鳥取砂丘の南側、千代川の支流となる摩尼川に“犬橋”と名付けられた橋がある。そしてその橋のたもとには“犬塚”と刻まれた碑が建てられている。この橋の名と碑が、ここに橋が架けられたいきさつを今に伝えている。
この橋が架けられている道は、昔から因幡と但馬を結ぶ主要な街道となっていた。ところが川に架かる橋が粗末なもので、丸太を差し渡しただけの橋であったため、街道を往来する者にとって非常に難儀な場所となっていた。これを見かねたのが、近くに住む百姓。橋の架け替えの資金を集めようと、自分の飼っている犬の首に趣意書を書いた木札と募金の竹筒をくくりつけて放してやった。すると犬は街道を旅する者のそばへ行ったり、また近隣の家々を回り、とうとう掛け替えに必要な資金を集めたのである。こうして街道に立派な橋ができたのである。
その後この犬は天寿を全うし、人々は功績を称えて遺骸を橋のそばに埋め、そこに“犬塚”を築いて祀った。そしていつしかこの橋を“犬橋”と呼ぶようになったという。
アクセス:鳥取県鳥取市浜坂町