サイトアイコン 伝承怪談奇談・歴史秘話の現場を紹介|日本伝承大鑑

鼻ぐり塚

【はなぐりづか】

備前一之宮・吉備津彦神社と備中一之宮・吉備津神社を結ぶ古道のちょうど中間あたりにあるのが、福田海本部である。そこに畜霊供養の鼻ぐり塚がある。

大正14年(1925年)に創設された塚には、全国各地から贈られてきた“鼻ぐり”が奉納されている。鼻ぐりとは牛の鼻輪。病死したり屠殺された牛が残すことの出来る唯一の形見と言うべき鼻ぐりを供養することで、人のために奉仕し尽くして一生を終える畜類への感謝の念を忘れないというのが、創設の趣旨である。そして集められた鼻ぐりの数は700万個にも及ぶという。

鼻ぐり塚は、元々あった円墳を利用して作られている。横穴式の石室内には、真鍮製の鼻輪を溶かして造られた、阿弥陀の宝号を刻んだプレートが収まっている。そして墳丘には大量の鼻ぐりが積み上げられており、その正面部分には馬頭観音が置かれている。さらには牛と豚の像もあり、その様子は見る者を圧倒する。

<用語解説>
◆福田海(ふくでんかい)
中山通幽(1862-1936)が明治41年(1908年)創設した宗教。福田とは布施をおこなうことで功徳を得るという仏教思想であり、特に社会救済に重きを置いている。福田海は陰徳積善の功徳を唱え、放置された無縁墓を集めて供養する実践をおこなっている(京都の化野念仏寺の千灯供養、滋賀の石塔寺の供養塔群も、通幽の事業である)。

◆馬頭観音
観音菩薩の変化身の1つとされるが、観音の中では唯一の忿怒相である。頭上に馬頭を戴いているために付けられた名であるが、その名によって牛馬の神として信仰されている。また路傍の動物供養塔に刻まれることも多い。

アクセス:岡山県岡山市北区吉備津

モバイルバージョンを終了