【ふくまんじ つばきひめぞう】
三原村のほぼ中央部にある来栖野トンネルの南口のすぐそばにあるのが福万寺である。寺といっても、平成9年(1997年)に建てられた小さな堂宇があるだけである。その堂宇に安置されているのが、本尊の阿弥陀如来像と、椿姫の像である。
椿姫の像は、ヒノキの寄木造り。頭には瓔珞冠をいただき、玉眼がはめ込まれている。錦は青色、袴は緋色に彩色され、胸のあたりで両手を合わせた像は、日本古来の像とは異なる強烈な印象を与える。
京都の争乱を避け、土佐中村へ下向してきた一条房家に一人の息女がいた。母親が椿の実を食べた夢を見て出来た子ということで“椿”と名付けられた幼い姫は、乳母と共に皆尾の館に住んでいたという。ところがある年、突然行方知れずになる。何者かにさらわれたとも、鳥獣に捕らえられたともされたが、結局戻ることはなかった。ただ姫の小袖がツツジの古木に引っ掛かっていたのが見つかっただけであった。この像は、いなくなってしまった幼子を供養するために作られたとされる。
<用語解説>
◆一条房家
1475-1539。父と共に土佐に下向するが、4歳の時に父が亡くなり、18歳の時に元服する。その後、土佐国司として国侍の崇敬を集め、中村を拠点に土佐一条氏の最盛期を作り出す。
アクセス:高知県幡多郡三原村皆尾